大判例

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福島地方裁判所 昭和57年(行ウ)1号 判決 1987年3月30日

東京都中央区築地三丁目一番四号四〇三

原告

古市滝之助

右訴訟代理人弁護士

宮本康昭

福島県郡山市堂前町二〇―十一

被告

郡山税務署収税官吏

大蔵事務官

菊地昭悦

同県白河市字中田五―一

被告

白河税務署収税官吏

大蔵事務官

石川武

仙台市本町三ノ三ノ一

仙台合同庁舎

被告

仙台国税局収税官吏

大蔵事務官

水沢淳

右同所同番号

被告

仙台国税局収税官吏

大蔵事務官

奥山修

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被告

代表者法務大臣

遠藤要

被告五名指定代理人

浦野正幸

菅谷久男

猪狩俊郎

佐々木運悦

福島昭夫

矢吹昭夫

高橋敏男

斎藤久夫

主文

原告の被告郡山税務署収税官吏及び同白河税務署収税官吏に対する各主位的請求の訴え(差押処分無効確認の訴え)並びに原告の被告仙台国税局収税官吏両名に対する各予備的請求の訴え(差押処分取消請求の訴え)をいずれも却下する。

原告の被告国に対する請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者双方の求める裁判

一  原告

1(主位的請求)

原告と被告郡山税務署収税官吏との間において、昭和五十六年一一月二〇日、原告に対しなした郡山税務署収税官吏佐藤正明の別紙目録(一)記載の物件にかかる差押処分、同税務署収税官吏佐藤恒夫の別紙目録(二)記載の物件にかかる差押処分はいずれも無効であることを、原告と被告白河税務署収税官吏との間において、同日原告に対してなした白河税務署収税官吏遠藤道高の別紙目録(三)記載の物件にかかる差押処分、同税務署収税官吏小野昭の別紙目録(四)記載の物件にかかる差押処分はいずれも無効であることを、それぞれ確認する。

(予備的請求)

被告仙台国税局収税官吏水沢淳及び同仙台国税局収税官吏奥山修に対し、右郡山税務署収税官吏両名及び右白河税務署収税官吏両名がそれぞれなした前項の各差押処分をいずれも取り消す。

2 被告国は原告に対し、金一五四七万四二九四円及びこれに対する昭和五七年一月二六日から支払済まで年五分の割合による金員並びに昭和五六年一二月二〇日からこの判決確定に至るまで月額金二九九万四三〇〇円の割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は被告らの負担とする。

4 2項につき、仮執行の宣言

二  被告ら

1(本案前の申立)

主文第一、第三項同旨

2(本案に対する申立)

原告の請求をいずれも棄却する。

主文第三項同旨

仮執行宣言がなされる場合、担保を条件とする仮執行免脱宣言

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は酒類の販売を業とするものであるところ、昭和五六年一一月二〇日、郡山税務署収税官吏佐藤正明は、別紙目録(一)記載の場所及び物に対し、同税務署収税官吏佐藤恒夫は、別紙目録(二)記載の場所及び物に対し、白河税務署収税官吏遠藤道高は、別紙目録(三)記載の場所及び物に対し、同税務署収税官吏小野昭は別紙目録記載の物に対して差押えの処分(以下「本件差押処分」という。)をした。

2  右収税官吏らは、原告が実施しているいわゆる「ボトルカード方式」による酒類の販売をとらえて、酒税法違反の行為があるとし、本件差押処分をしたものである。

右の「ボトルカード方式」とは、酒類の購入希望者(消費者)が代金と引換えに、希望する酒類の銘柄と数量とを記載したカード(ボトルカード)を受け取ったうえ、酒類販売業者に連絡すると、酒類販売業者がその酒類を消費者の希望する日時・場所に持ち届けて、販売する酒類販売方法であるが、何ら違法でない。

3  原告のボトルカード方式による酒類販売が、仮に酒税法九条一項に抵触するとしても、右条項は憲法に定められた国民の職業選択の自由を侵害するもので、憲法に違反して無効であり、適用の余地がない。すなわち

(一) 憲法二二条一項が保障するところの「職業選択の自由」(以下「職業の自由」という。)とは、狭義における職業選択(職業の開始・継続・廃止)の自由のみならず、選択した職業の遂行(職業活動の内容・態様)においての自由を包含する。酒税法九条、一〇条に規定されている営業の許可制(以下総称して、「酒類販売業免許制」という。)は、右にいう職業活動における自由に対する制約を課する最も徹底した強力な規制にほかならない。しかして、これを合憲と認めるためには、右制度自体に強い正当性のある合理的根拠が存在しなければならない。

(二) 合憲性判定の基準

(1) 職業の自由には、職業が性質上社会的相互関連性の大きい活動であることから、いわゆる精神的自由に比較して公権力による規制の要請が強く、憲法二二条一項の「公共の福祉に反しない限り」という分言に示されているとおり、職業の自由自体に制約の必要性が内在すると解されている。しかし、職業が、その種類・性質・内容・社会的意義及び影響において極めて多種多様であるため、それに対する規制を要請する社会的理由・目的も千差万別で、重要性も区々にわたる。しかして、「これら規制措置が憲法二二条一項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるかどうかは、これを一律に論することができず、具体的な規制措置について、規制の目的・必要性・内容及び制限の程度を検討し、これらを比較考量したうえで慎重に決定されなければならない」(最高裁判所判決、昭和五〇年四月三日民事判例集二九巻四号五七二頁、いわゆる薬事法薬局距離制限の違憲判決)。

(2) 職業の自由に対する制約は、以上のことから、類型として規制目的によって分類し、社会公共に対する危険の防止といった消極的・警察的目的のための規制と、中小企業の保護といった社会・経済政策的目的のための積極的規制とに大別される。そして、右分類に従って、その規制の合憲性判定の基準が異なると説かれている。

前者の消極的・警察的規制の合憲性判定の基準は、「重要な公共の利益のため必要かつ合理的な措置であること」並びに「許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である………規制によっては、目的を十分達成することができないとみとめられること」とされる。右をより具体的に比べると、(イ)規制の目的に公共の利益に適する合理性・正当性の存在すること、(ロ)規制目的と規制手段との合理的関連性の存在、(ハ)規制することにより得られる利益と、規制することにより失われる利益との均衡という三要件(「必要最小限の原則」、「比例の原則」、「規制目的と規制手段の合理的関連性の原則」の具体化)が必要と解される。

後者の社会・経済政策的な積極的規制については、国家が社会・福祉国家的理念のもと、一定の政策的配慮により実施するものであるから、ことの性質上右に述べた消極的・警察的規制に比較し、さらに広汎な立法府の裁量を是認しなければならない。そして、その合憲性判定の基準を明確にしたものとして、小売商業調整特別措置法による小売市場許可制合憲判決(最高裁判所判決、昭和四十七年十一月二十二日刑事判例集二十六巻九号八六頁、以下「四七年判決」という。)がある。同判決は、「国は、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、もって社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るため、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規制措置を講ずることも、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、許されるべきであって、決して憲法の禁ずるところではない。」と判示している。すなわち、前記(イ)の規制目的自体に公共の利益に適する合理性・正当制が存在することは、当然のことながら、合憲制判定の第一の要件となろう。しかし、規制手段・程度並びに利益均衡については、原則として立法府の裁量に属すると解される。しかし、その裁量権も無限定ではありえない。右判決はこのことについて次のように判示する。「個人の経済活動に対する法的規制は決して無制限に許されるべきものではなく、その規制の対象・手段・態様等においても、自ら一定の限界が存するものと解するのが相当である。ところで、社会経済の分野において、法的規制措置を講ずる必要があるかどうか、その必要があるとしても、どのような対象について、どのような手段・態様の規制措置が適切妥当であるかは、主として立法政策の問題として、立法府の裁量的判断にまつほかない。………裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理的であることの明白である場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。」すなわち、右は、いわゆる「明白の原則」が合憲制判定の準則として妥当することを示したものである。したがって合憲制判定の第二の要件は、規制の手段・態様が著しく不合理であることが明白であると認められないことである。ただ、右第二の要件の判断は、いわば総合的判断であるから、前記(ロ)の規制目的と規制手段との合理的関連性の有無、(ハ)の利益の均衡の成否は、右要件を判断する際に考慮されるべき重要な一具体的要素と解されるであろう。

(3) 酒税法の立法目的は、「酒税の保全」(同法一〇条一一号、一一条)すなわち酒税収入の確保を図ることである。これは国家財政の目的であり、したがって同法にいう酒類販売業免許制は、右の経済政策的な積極的規制の類型ということになろう。しからばその合憲性判定の基準は、第一に、規制目的自体に公共の利益に適する合理性・正当性が存在すること、第二に、規制の手段・態様が著しく不合理であることが明白であると認められないことである。

(規制目的における合理性・正当性の欠如)

ア 酒類販売業免許制の目的は、酒税収入の確保というものである。事実、戦前から戦後にかけて、酒税収入は、わが国の財政収入中かなりの割合を占めてきたといわれる。しかし昭和四〇年代に入ってからは、その割合は漸次低減しており、昭和五五年現在では、租税収入に占める割合は約五パーセント程度のものである。

イ 政策的・積極的規制における公共の利益に適する合理性・正当性とは、換言すると、その規制目的が「経済的弱者の保護ないしいわゆる社会権の実現のためのものであること」である。ただし、憲法は、職業の自由、財産権に対しては、とくに「公共の福祉」により制限されることを明記しているが、これは、第一に、これら経済的自由がとりわけ二〇世紀に入ってから、経済的弱者の保護のために制約をうけるべきものとされてきたという資本主義憲法史における一定の発展をふまえた規定と理解されること、第二に、憲法は、いわゆる社会権を基本的人権として保障していることから、経済的自由に対する政策的・積極的規制が「公共の福祉」として許されるためには、右目的が、経済的弱者保護ないし社会権の実現のためでなければならない訳である。

ウ しかるとき、酒類販売業免許制の酒税収入確保という目的は、右にいう経済的弱者保護ないし社会権の実現のいずれにも該当しない。したがって、その規制目的自体何ら合理性・正当性を有していないというほかない。

そもそも、酒税収入確保という「租税政策」的目的は、「公共の福祉」というより政府の便宜を優先させたところの恣意的制約であって、憲法で保障された基本的人権たる職業(営業)の自由に対する規制原理には到底なりえないものである。しかして、租税徴収の確保を目的とした酒類販売業免許制は、憲法が基盤とする自由経済並びに福祉国家の理念と全く相容れない許可制というべきである。

エ 仮にこのように租税徴収確保という目的のため営業許可制を設けることに合理性・正当性があるというならば、そもそも、国民の経済活動のほとんどすべての領域が徴税対象とされている現代社会においては、国民が従事するほとんどすべての職業(営業)に許可制を採用できる筋合となる。これでは、国民の職業の自由か、国家の恣意的・便宜的政策により、いかようにでも左右されることとなり、憲法二二条一項の保障は全くの空文に等しくなるだけでなく、憲法の基盤である自由競争経済の原理は崩壊する。

(規制の手段・態様が著しく不合理であることの明白性)

ア 酒税法六条によれば、酒税納付義務者は、酒類製造者(一項)又は、酒類を保税地域から引き取る者(二項)であって、酒類販売業者ではない。しかして、仮に酒税収入の確保のための営業免許制を(それに合理性・正当性があると仮定した上で)設けるとするなら、右の酒類製造者又は酒類引取者を免許制とすることで十分足りるのであって、これに反して、納税義務者でない酒類販売業者を、右目的のために免許制とすることは、それ自体著しく不合理である。

イ 酒税法は、酒税徴収を確保するために、まず酒類製造業者に対して、申告書提出義務(同法三〇条の二)、各種事項の帳簿記載義務(同法四六条)、申告義務(同法四七条)、質問検査、検定受忍義務(同法四九条、五三条)、承認を受ける義務(同法五〇条)、届出義務(同法五〇条の二)、酒税証紙貼付義務(同法五一条)を課し、その懈怠にたいしては刑事罰をも規定(同法五四条以下)することによって、課税対象及び税額の把握に遺漏なきを期している。さらに納税の担保の確保として、同法三一条一項には、国税庁長官、国税局長又は税務署長は、酒税の保全のため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより酒類製造業者に対し、金額及び期間を指定し、酒税につき担保の提供を命ずることができ、提供すべき担保がないときには、担保の提供に代え、酒税の担保として酒類の保存をも命ずることができる旨規定しており、これを受けて、同法施行令及び国税庁基本通達は、担保提供を命じうる条件・期間・担保物件の種類・物件評価の詳細について定めている。

しかも、酒税は、酒類製造業者がその製造場から酒類を移出した月の翌月末日までに納付しなければならないものとされていて(同法三〇条の四第一項、三〇条の二第一項)、極めて短期の納期限が定められ、酒類製造業者の資産・信用等の変化による影響を受けないように配慮されている。

このように、酒税法並びにこれに基づく命令及び国税庁基本通達は、納税義務者たる酒類製造業者らから酒税徴収を確保するために、二重、三重にわたる万全の方策を講じている。

しからば、右方策に加えて、酒税収入の確保という名目のもとに、酒税納付義務者でもない酒類販売業者までに対しても免許制の規制を加えることは、いわば屋上屋を重ねるところの全くの無用の措置というべきであって、その手段・態様は、著しく合理性を欠くことが明白である。

ウ むしろ逆に、酒類販売業の自由競争を認めれば、その活発な販売競争によって販売量が増大し、結果的に酒税徴収額も増大することは経験則上明らかである。

(三) 以上とおり、酒税法九条一項、一〇条各号にいう酒類販売業免許制は、憲法二二条一項に違反し、無効というほかなく、結局のところ、本件収税官吏による捜索、差押処分は、行為自体違法な国家権力の行使というほかない。

4  したがって、原告のボトルカード方式による酒類販売は酒税法九条一項に違反せず、或は右条項自体が憲法違反であるから、同条項違反を理由とする本件差押処分には重大かつ明白な瑕疵があって無効であり、仮に無効でないとしても違法な処分として取り消されるべきものである。

5  前記収税官吏らの本件差押処分は、右のとおり違法な国家公権力の行使であり、かつ同収税官吏らの故意又は過失に基づく行為であるから、これによって原告に生じた損害については、被告国においてこれを賠償する義務がある。

6  原告が本件差押によって蒙った損害は次のとおりである。

(一) 酒類差押による積極的損害

郡山税務署分 金二〇六万七六九二円

白河税務署分 金四一万二三〇二円

(二) 営業継続を拒まれたことによる得べかりし利益の喪失

(1) 前記収税官吏らの不法な本件差押によって、原告の営業継続が事実上不可能となった。

(2) 郡山税務署分についての収益は、昭和五六年一〇月一八日から同年一一月一九日までの間(実働三二日)の売上実績金二一五八万三〇〇〇円、純利益金三〇七万一一一〇円、一日当り純利益金九万五九七二円であり、白河税務署分についての収益は、同年一〇月二八日から同年一一月一九日までの間(実働二一日)の売上実績金二九四万円、純利益金四九万九八〇〇円、一日当り純利益金二万三八〇〇円であるところ、一か月に二五日営業するものとして、その純利益は一か月金二九九万四三〇〇円となる。

(3) 原告の営業は、本件差押処分の日から前記収税官吏らの非が本訴判決の確定により明らかになるまで、継続不可能となり、本件差押の日以降本訴判決の確定に至るまで、少なくとも月額金二九九万四三〇〇円の割合による損害を継続して蒙ることとなった。

(三) 精神的損害

前記収税官吏らによる違法な捜索、差押えによって原告が受けた苦痛は筆舌に尽し難いものがあり、これを慰籍するには、少なくとも金一〇〇〇万円を要する。

7  よって原告は、主位的に被告郡山税務署収税官吏菊池昭悦(同税務署収税官吏佐藤正明の後任者は順次高崎博、舟窪直志、菊池昭悦、同税務署収税官吏佐藤恒夫の後任者は菊池昭悦)に対し、同税務署収税官吏佐藤正明が別紙目録(一)記載の物件に対してなした本件差押処分が、同税務署収税官吏佐藤恒夫が別紙目録(二)記載の物件に対してなした本件差押処分が、いずれも無効であることの確認を、被告白河税務署収税官吏石川武(同税務署収税官吏遠藤道高の後任者は庄子勝、同税務署収税官吏小野昭の後任者は順次大沼正雄、庄子勝であり、右庄子勝の後任者は順次沢田真、石川武)に対し、同税務署収税官吏遠藤道高が別紙目録(三)記載の物件に対してなした本件差押処分が、同税務署収税官吏小野昭が別紙目録(四)記載の物件に対してなした本件差押処分が、いずれも無効であることの確認を求め、予備的に被告仙台国税局収税官吏水沢淳及び同仙台国税局収税官吏奥山修に対し、郡山税務署収税官吏佐藤正明が別紙目録(一)記載の物件に対して、同税務署収税官吏佐藤恒夫が別紙目録(二)記載の物件に対して、白河税務署収税官吏遠藤道高が別紙目録(三)記載の物件に対して、同税務署収税官吏小野昭が別紙目録(四)記載の物件に対してなした本件差押処分はこれを取り消し、被告国に対し、本件差押処分によって生じた積極的損害金二四七万九九九四円、昭和五六年一一月二〇日から同年一一月一九日までの逸失利益相当の損害金二九九万四三〇〇円、慰籍料金一〇〇〇万円合計金一五四七万四二九四円及びこれに対し本件訴状が被告国に送達された日の翌日である昭和五七年一月二六日から支払済まで民法所定の年五分の割合による遅延損害金並びに昭和五六年一二月二〇日からこの判決確定にいたるまで月額金二九九万四三〇〇円の割合による逸失利益相当の損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告らの認否

1  請求原因1のうち、原告が酒類の販売を業とするものであること、郡山税務署収税官吏佐藤正明、同税務署収税官吏佐藤恒夫、白河税務署収税官吏遠藤道高、同税務署収税官吏小野昭が昭和五六年一一月二〇日、原告主張の各場所において、酒税法違反嫌疑事件につき捜索、差押えをしたことは、認める。

ただし、原告が所轄白河税務署長から酒類の販売業免許を受けた販売場所所在地は、福島県東白川郡矢祭町大字中石井字小野沢一〇番地であり、また右捜索、差押えは、原告、訴外角田酒販株式会社及び訴外井上久寿男に対する各酒税法違反嫌疑事件について実施されたもので、その差押物件及び数量は、別紙目録(五)ないし(八)に記載のとおりである。

2  同2のうち、郡山税務署及び白河税務署の収税官吏が「ボトルカード方式」と称して原告が行っていた酒類の販売行為について、酒税法違反の嫌疑があるとしたことは、認める。「ボトルカード方式」の販売方法についての原告の主張事実は否認する。「ボトルカード方式」による酒類販売方法が違法でないとの原告の主張は争う。

3  同3のうち、酒類販売業免許制度が憲法に違反するとの点を争う。

(一) 酒類販売業免許制度の目的

(1) 酒税法九条一項は、酒類の販売業をしようとする者は、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長の免許を受けなければならない旨規定する。

この酒類販売業免許という職業選択の自由に対する規制が合憲か否かは、まずもって規制の目的が明らかにされなければならない。

(2) 同法は、酒類販売業免許制度の目的について直接明言した規定を設けていない。

しかし、昭和十三年から施行をみた酒類販売業免許制度の立法の提案理由として、当時の国務大臣賀屋興宣が「酒税ノ保全ヲ期スル為メ、酒類の販売業ニ付キ免許制度ヲ採用スルコトト致シ、……」と述べていること、同法一〇条一一号には免許を拒否しうる消極要件として「酒税の保全上酒類の受給の均衡を維持する必要があるため……販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合」を掲げていること、同法一一条一項が「……販売業免許を与える場合において、酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持するため必要があると認められるときは、……条件を附することができる。」と規定していること、同法一四条が、二年以上引き続き酒類の販売業をしない場合に酒類販売業免許を取り消すことができる旨規定していること等に着目すれば、酒類販売業免許制度の目的は、「酒税の保全」という基本目的のために、「酒類の需給の均衡の維持」を図ることにあると認定できる。

このことは、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律一条が「この法律は、酒税が国税収入のうちにおいて占める地位にかんがみ、酒税の保全及び酒類業界の安定のため、酒類業者が組合を設立して酒類の適切な需給調整等を行うことができることとするとともに、政府が酒類業者等に対して必要な措置を講ずることができるようにし、もって酒税の確保及び酒類の取引の安定を図ることを目的とする。」と規定し、また同法八四条三項が、大蔵大臣は、酒類の販売の競争が正常の程度を超えて行われていることにより、酒類の取引の円滑な運行が阻害され、酒類製造業又は酒類販売業の経営が不健全となっており、又はなるおそれがあるため、酒税の滞納又は脱税が行われ、又は行われるおそれがあると認められる場合においては、酒販組合や酒類販売業者等に対して必要な措置がとれる旨規定しているところからも窺い知ることができる。

(3) 酒税の保全という基本目的は、さらにいくつかの側面から考察することができる。

第一に、酒税の逋脱防止の目的である。同法一〇条が、免許申請者等が過去において法律違反の事実があった等遵法精神に欠けるところがあると認められる場合(一号ないし五号、七号、八号)、取締上不適当と認められる場所に販売場を設けようとする場合(九号)を消極要件としていることは、酒税の逋脱を企て、又はこれに荷担する危険性が高い場合に、免許を拒否できることにしたものと解しうるのである。

第二に、酒税の滞納防止の目的である。酒類販売業者は酒類製造者と担税者(消費者)を結ぶパイプ役であり、いわば酒税の間接的な徴収機関といえる重要な地位にあるのであるから、酒類販売業者の経営内容が悪化すれば納税義務者たる酒類販売業者の納付すべき酒税の回収が困難となる。同法一〇条六号が、免許申請者が滞納処分を受けた者である場合、すなわち資力が不十分である場合を消極要件としているのは右の趣旨である。

(4) 酒類の需給の均衡の維持という直接の目的について考察すれば、それは社会経済政策の見地から、消費者の需要に対して適正に、つまり過不足なく供給しうるよう、酒類販売業者の乱立や過当な販売競争を防止し、その経営の安定を図ることを目的とするものである。

そもそも昭和一三年に酒類販売業免許制度が導入された契機として、当時は酒類販売業者が乱立して販売競争は激化の一途をたどり、乱売の結果倒産等のやむなきに至る者が続出し、ひいては醸造業者もその影響を受けて売掛代金の回収に多大の困難を来たし、その数も激減したという事実があった。

(二) 酒類販売業免許制度の立法経緯

(1) 酒類販売業についての免許制度は、昭和一三年四月一日から実施されたものであるが、それ以前は明治の初期に過渡的に施行された酒類請売営業税時代は別として、酒類の販売は規制されていなかった。

免許制度が立法化された昭和一三年以前の酒類販売業者は、酒を水で割って売ることも自由であり、これを自己の利益に結び付ける手段としていた。

(2) 当時の酒類販売業者数は二四万人から二五万人の多きに達していたことから、各業者間の販売競争は激化の一途をたどり、乱売に拍車がかかって売行不振をきたす販売業者が次第に増加し、販売業者の倒産や名義変更は年間を通じて全業者数の三割にも達する状況となった。一方、酒類の醸造業者もその影響を受けて売掛代金の回収に多大の困難を来たし、最盛期には約一万二〇〇〇人もあった醸造業者は毎年二〇〇人程度のものが廃業を余儀なくされ、昭和一三年当時には七千数百人に激減した。

(3) このような社会的、経済的な事情を背景として、時の政府は免許制度の立法化を図ることとし、「酒造税法中改正法律案」、「酒精及酒精含有飲料税法中改正法律案」及び「麦酒税法中改正法律案」を国会に提出してその成立をみ、昭和一三年四月一日から同制度の施行をみたものである。

(三) 酒類販売業免許制度の現状

(1) 昭和一三年四月から実施をみた免許制度は、その後、昭和一五年の酒税法の制定や、昭和二八年の酒税法の全部改正等数次の改正を経て漸次整備されて今日に至っており、その間、国税収入中に占める酒税収入の地位に幾多の消長がみられたが、その必要性については、何らの変化もきたしていない。

免許制度の運用に当たっては、消費者の利便についても十分考慮することとしており、特に団地等の人口急増地域及び新開地、山間へき地等の地域の特殊事情については十分に配慮するなど、その弾力的運用に努めているので、全国どこへ行っても酒販店のないような地域はなく、消費者に特段の不便は与えていない。

(2) 現在、酒類の販売場(一般小売)は一七万場(約二〇〇世帯に一店舗)もあり、薬局及び薬店、野菜・果実小売店、鮮魚小売店、食肉小売店など他業種に比べかなり多い店舗数となっている。また、最近五年間において約一五〇〇〇件の一般小売の新規免許が付与されていること等からも、特に新規参入が厳しく制限されているというようなことはない。

(3) なお、酒類販売業者は、そのほとんどが中小零細業者であり、しかも、他業種に比べマージン率も高くない状況にあり、また、現在酒類の需要は伸び悩んでいる状況にある。このような状況の下で免許制度を廃止し、酒類販売業者が乱立すれば、中小零細業者の存立がおびやかされ、ひいては酒税の確保を危くし、国民保健衛生の悪化をも招きかねない。このような観点からしても、現行免許制度を維持する必要がある。

(四) 酒類販売業免許制度の合理性と必要性

酒類販売業免許制度は、昭和一三年に発足して以来今日まで四五年の長きにわたり実施されてきているが、同制度の基本目的は、高率な酒税の保全・安定的確保である。そのほか、同制度の付随的目的は多岐にわたるので、その社会的役割は極めて重大なものである。

(1) 酒類には、物品税等消費税中で最も高率の酒税が課せられており、かつ、多額に酒税収入は国家財政上重要な地位を占めている。

酒類販売業者は、酒類が製造場から移出されてから消費者に渡るまでの流通過程を担っており、酒類代金の円滑な回収を通じて高率な酒税の転嫁を図るという面において、酒類製造者と担税者すなわち消費者を結ぶパイプ役として重要な地位にある。このことは、酒類販売業者一場当りに転嫁される年間酒税額が一〇〇〇万円余と多額であることからも容易に推測できる。

<省略>

仮に、経営基盤のぜい弱な者が参入したり、過度に酒類販売業者が増加して、過当競争が行われた場合には、酒類の取引に混乱を招き、酒類販売業者の経営内容が悪化して酒類製造者の納付すべき酒税の回収が困難となり、ひいては、酒税の確保、すなわち国家財政の危機を招くおそれがある。

(2) 免許制度が導入された昭和十三年当時は、酒類販売業者の乱立により市場が混乱し酒類販売業者の倒産が相次いだため、酒類代金の回収に困難を来たし、酒類製造者の貸倒れが多くなり、酒税の滞納割合も非常に高い状況にあったので、免許制度はこのような事態を防ぐ最良の手段として制定されたものである。

(3) 酒類小売業者の粗利益率は、昭和五十五年度十七・六パーセントと、他の一般小売業者の三十・六パーセント(食料品小売業者平均二十六・九パーセント)に比べ低率である。このことからも、免許制度が酒類の価格安定ひいては国民の消費経済に役立っていることは明らかである。しかしながら、粗利益率の低い酒類を取扱う業者は、乱立、乱売に対する抵抗力が小さく、仮に、免許制度が廃止されれば、酒類販売業者のほとんどを占める中小零細業者は、その存立をおびやかされ、その結果として酒税の確保を危うくし、財政問題のほか、種々の悪影響を与えることは明らかである。

(4) 免許制度を行政効率の面からみると、同制度によって記帳義務や申告義務等各種の義務の遵守状況は最も良好な状態におかれており、他の税目にみられるような事務量より比較的少ない事務量で対処されてきており、仮に、免許制度を廃止するとすれば、酒税行政事務量の増加のほか、新たな酒税の滞納の発生に対処するための事務量の増加が予測される。

(5) 酒類は致酔飲料であることから、秩序ある供給を図る必要が要請されるところである。

仮に、酒類を自由に誰でも販売できることとした場合には、飲酒による事故、アルコール依存症、未成年者の飲酒など、種々の社会問題が増大するおそれもある。

酒類販売業免許制度は、これらの問題を防止することにおいて社会秩序の維持、国民保健衛生に大きく寄与している。

(五) 酒類販売業免許制度の合憲性

(1) 酒税は国の租税収入の主要な一部をなしており、酒税徴収の確保は国家財政上極めて重要な課題であるから、酒税の保全という基本目的が財政政策の一種であることは明らかである。

したがって酒類販売業免許制度は、職業選択の自由に対する積極的な政策目的のための制限に属するものである。

そして酒類販売業免許制度は、高率な酒税について採用された庫出課税制度を有効に機能せしめ、もって酒税収入の安定的かつ効率的な確保を図ることを主たる目的とし、併せて逋脱防止を図るために採用された制度であり、正に酒税の賦課徴収を含む全体としての租税制度の一環をなすものである。

(2) ところで、租税体系は国の財政需要の状況、社会・経済の構造、国民生活の状況、国民所得の分配の状況、その時代の社会・産業政策等の多数の不確定な要素を総合的に考慮してはじめて樹立しうるものであり、したがって、いかなる租税体系を組むかは、主として国民経済・財政政策の問題として、立法府の裁量的判断にまつほかはないというべきである。けだし、ある税制を定立しその内容を決定するに当たっては、国民経済の実態についての正確な基礎資料が必要であり、具体的な租税法規が現実の社会においてどのような効果を有するか、国民経済の安定と成長にどのような影響を及ぼすか、その利害得失を洞察する共に、広く政策全体との調和を考慮する等、相互に関連する諸条件についての適正な評価と判断が必要であるところ、このような評価と判断の機能は、正に立法府の使命とするところであり、立法府こそがその機能を果たす適格を具えた国家機関であるというべきであるからである。憲法がその八十四条において租税法律主義を採用しているのは、このような趣旨からであると考えられ、したがって、租税を創設し、改廃するのはもとより、納税義務者、課税標準、徴税の手続きについても、すべて法律に基づいて定めなければならないと同時に、法律に基づいて定めるところにゆだねられているものと解される。

(3) このように、立法府の広範な裁量は、納税義務者の決定や徴税手続の決定などの賦課徴収制度の選択についても認められているのであり、したがって、庫出課税制度の採用はもとより、それと密接に関連する酒類販売業免許制度の採用についても、立法府の広範な裁量が認められるべきである。

(4) 原告は、「酒税収入確保という『租税政策』的目的は、『公共の福祉』というより政府の便宜を優先させたところの……恣意的制約であって、憲法で保障された基本的人権たる職業(営業)の自由に対する規制原理には到底なりえないものである。しかして、租税徴収の確保を目的とした酒類販売業免許制度は、憲法が基盤とする自由経済並びに福祉国家の理念と全く相容れない許可制というべきである。」と主張する。

しかし、酒税の保全という酒類販売業免許制度の基本目的は憲法二二条一項の「公共の福祉」に含まれ、同条項に違反するものではない。

すなわち、国は国民生活の安定の確保のみではなく、社会・経済の発展をも図るべき重大な責務を担っている。これからの責務を果たすために、国は、予めこれに要する経費を調達しなければならないのは当然のことであるが、さらにその前提として、国の存立の維持及び統治機構の運営のための経費を調達する必要があることもまた自明の理である。

右の経費は租税によって賄われるのであるから、憲法は、国の重要な権能として租税の賦課徴収権を認め(憲法八四条、八六条、六〇条)、これに対応して国民の納税義務を明記しているのである(憲法三〇条)。

したがって、租税の確保の要請は、憲法二二条一項の「公共の福祉」に含まれると言わなければならない。

また、もとより租税の確保のために、憲法の枠内において、いかなる租税を課し、いかなる方法で徴収するかは、租税法律主義の原則(憲法八四条)に基づく立法府の政策的技術的な裁量に委ねられているのであって、酒税という税目もこの立法裁量によって採用されているのである。

このように酒類販売業免許制度は、酒税の保全を基本目的とし、併せて、酒類販売業者の経営の安定を図っているのであり、それは憲法二二条一項の「公共の福祉」に含まれるものであるから、規制の目的において、四七年判決の言う一応の合理性はもとより、十分の合理性を有しているのである。

(5) さらに原告は、「仮にこのように租税徴収確保という目的のため営業許可制を設けることに合理性・正当性があるというならば、そもそも、国民の経済活動のほとんどすべての領域が徴税対象とされている現代社会においては、国民が従事するほとんどすべての職業(営業)に許可制を採用できる筋合となる。これでは、国民の職業の自由が、国家の恣意的・便宜的政策により、いかようにでも左右されることとなり、憲法二二条一項の保障は全くの空文に等しくなるだけでなく、憲法の基盤である自由競争経済の原理は崩壊する。」とも主張する。

しかし、租税目的により営業許可制を各種営業に極端に拡大させるという非現実的な状態を仮定して、現行の酒類販売業免許制度の違憲性を主張するのは、論理の飛躍である。酒税法は、租税収入のうちに占める酒税の重要な地位及び効率税率のため密造酒等が横行しやすいという特別の属性に着目し、合理的な範囲内における規制の手段・態様を採用して酒類販売業免許制度を規定しているのである。この点を無視した原告の右主張は失当である。

(6) 規制の手段・態様の合理性

ア 酒類販売業免許制度の態様については、酒税法一〇条は、免許の許否の権限を有する税務署長の恣意的な判断を排除して免許処分の公正が期せられるよう、免許を与えないことができる場合の消極要件を制限列挙しており、免許を与えることを原則としている。

イ 原告は、酒税法が納税義務者たる酒類製造者、酒類取引者ばかりでなく、酒類販売業者も免許制度のもに規制している点について、「仮に酒税収入の確保のための営業免許制を(それに合理性・正当性があると仮定した上で)設けるとするなら、右の酒類製造者又は酒類引取者を免許制とすることで十分足りる訳で、これに反して、納税義務者でない酒類販売業者を、右目的のために免許制とすることは、それ自体著しく不合理である。」「酒税収入の確保という名目のもとに、酒税納付義務者でもない酒類販売業者までに対しても免許制の規制を加えることは、いわば屋上屋を重ねるところの全く無用の措置というべきであって、その手段・態様は著しく合理性を欠くことが明白である。」と主張する。

しかし、高率の酒税の納付義務を負担する酒類製造者等は、消費税たる酒税を担税者たる消費者に代わって納付しているのであるから、酒類が製造者等のもとから適正な商品取引の流通過程に乗って消費者のもとに供給され、もって酒税が担税者(消費者)に転嫁されなければならない。そして、酒税の転嫁の過程をみるならば、酒類販売業者は酒類製造者と担税者(消費者)を結ぶパイプ役であり、いわば酒税の間接的な徴収機関といえる重要な地位にあり、酒類製造者としては酒類販売業者から酒類販売代金が確実に回収されなければ納税の負担に耐えることができなくなるのである。

したがって酒類販売業者の経営の安定を図ること、また信頼しうる酒類販売業者をして販売業の任に当たらしめることは極めて重要な要請であって、酒類販売業者を規制することは必要かつ合理的なことである。

ウ なお仮に、四七年判決の司法審査の基準をひとまずおくとしても、酒類販売業免許制度という規制の手段・態様は、以下に述べるとおり十分の合理性と必要性があり、合憲であることは明らかといわねばならない。

まず、酒類販売業者に対する規制手段としては、酒税法が現に酒類販売業者に対する記帳義務(同法四六条)、申告義務(同法四七条)、承認を受ける義務(同法五〇条)、届出義務(同法五〇条の二)、質問検査受認義務(同胞五三条)等及びそれらの義務違反に対する罰則(同法第九章)を規定して営業活動の態様、内容を規制しているのであるから、それ以上に営業活動の開始を規制する免許制度を採用する理由はないのではないかとの主張があるかも知れない。これは免許制(許可制)よりゆるやかな届出制で足りるのではないかという主張とも相通ずるところがある。

しかし酒類販売業者の規制手段として、免許制ではなく、右に掲記したような営業活動の態様、内容に対する諸方策のみ、あるいは届出制を採用するならば、極めて多数に及ぶ全国の酒類販売場の数(昭和五六年三月時点で役一七万場であり、他業種と比べてもかなり多い。)からしても、また規制をゆるめることで酒類販売業者として新規参入してくる者の数が従前以上に増加することが予想されることからしても、酒類販売業者に対する十分な指導、監督を行うためには、行政事務量の増加に伴うより多数の人員と経費を必要とすることは必至である。このような行政事務及び財政に対するマイナス要因は極めて大きいものであって、現実にはほとんど実施は困難であるといわなければならない。酒類販売業制度は、酒税の保全及び酒類販売業者の経営の安定を図るために合理的かつ裁量の手段として制定されたものである。

次に、酒類販売業免許制度という規制の手段・態様は、その立法事実に照らしても、十分の合理性と必要性があるのである。すなわち酒類販売業者免許制度が導入された当時の状況が、酒類販売業者の乱立、乱売によって由々しい事態となっていたこと、免許制度よりゆるやかな規制手段では同じ目的を達成することは困難であることは、前記のとおりである。そして酒類販売業免許制度が導入されて現在に至るまでのその制度の実効性についしは、酒類販売業者の経営の安定が維持され、酒税が効率的、かつ安定的に確保されており、かといって新規参入者を厳しく制限していることもなく、消費者の需要に対して公正な供給が実現されていることからも認めうるところである。仮に酒類販売業免許制度を廃止し、酒類販売業者を自由競争のもとにおいたならば、そのほとんどが中小零細業者であり、他業種に比べてマージン率も低く、酒類の需要が伸び悩んでいる現状に照らせば、業者の乱立あるいは大資本の経済的圧迫に対して抵抗力の少ない販売業者としてはその存立がおびやかされ、ひいては酒税の確保に困難を来す事態を生ずるおそれもあるのである。

(7) 以上のとおり、酒類販売業免許制度は、その目的のみならず、これを達成するための規制の手段・態様においても合理性を認めることができるのであって、営業の自由に対するそのような法的規制措置が、租税制度について認められた立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合理であることが明白な場合であるとは解されず、憲法に適合するものである。

4  同4ないし6は、いずれも争う。

5  同7のうち、各税務署収税官吏の後任者に関する原告の主張事実は認める。その余は争う。

三  抗弁

1  本案前の抗弁

(一) 通告処分の履行による訴えの利益の消滅

(1) 間接国税に関する犯則事件にあっては、収税官吏が犯則事件の調査を終えたときは、犯則嫌疑者の居所が分からないとき等の事情がある場合以外は、直ちに告発することなく、その結果を所轄国税局長又は所轄税務署長に報告し(国税犯則取締法一三条一項)、右報告を受けた国税局長又は税務署長が調査の結果犯則がなされたことの心証を得たときは、通告の理由、罰金又は科料に相当する金額、没収品に該当する物品、徴収金に相当する金額、書類送達並びに差押物件の運搬、保管に要した費用、納付場所等を内容とする通告処分を行うのを原則とする

(同四条一項)。そして実務上、通告書には、同法一七条所定の告発につき、通告書の送金を受けた日から二〇日以内に通告の旨を履行しないときは、検察官に告発する旨の記載がなされている。

(2) 右通告処分を受けた犯則者は、通告処分の内容を履行するかどうかをその自由意志によって決することができ、いかなる場合にも通告に定める納付を強制されることはなく、任意に履行したときは、公訴は提起されない(同法一六条一項)。履行しないときは、国税局長又は税務署長の告発及び検察官の公訴の提起をまって刑事手続に移行し、通告の対象となった犯則事実の有無について刑事手続において審理し、確定することとなる。

(3) 通告の旨の履行は、犯則者がその自由意志により、通告書に記載された罰金相当額等を納付し、没収品に該当する物品については納付の申出をすることであり、これにより事案の終結がなされる。そして同法一四条一項ただし書の規定により、没収品に該当する物品について納付の申出をなすべき旨を通告された場合において、当該物品について納付の申出があったときは、当該物品を納付したと同一の効果を生じ、この納付の申出により、当該物品の所有権は、国庫に帰属することとなる。

(4) 以上のとおり、間接国税に関する犯則者は、通告処分を履行して公訴権を消滅させるか、又はこれを履行しないで刑事手続において争うかのいずれかを、その自由意志により選択できるが、履行を選択した場合、犯則者は罰金等に相当する金額を納付し、没収品に該当する物品等を納付したことになる反面、公訴権が消滅し、起訴されることがなくなる。

(5) 本件差押処分に係わる通告書は、昭和五七年四月八日原告に送達され、その後、原告はその自由な意志によって、同年五月八日、右通告にかかる罰金相当額を納付し、更に、同年六月八日、没収品に該当する物品の納付の申出及び書類送達費の納付をした。

なお、納付書には、「但し、本件については福島地方裁判所に於て現に係争中であるので通告に従って全部納付を行い難い旨再三開陳してきたところであるが、貴局より納付に応じない時は告発の上刑事罰を科するというきびしい通告なので、右訴訟に於ては任意に納付に応じた事実を援用しない事を条件にやむを得ず納付に応ずる次第である。」との条件的な文言が付されているが、右文言は原告が一方的に付したにすぎず、仙台国税局において右文言を付することをしようようしたり、応諾したものではないのであり、原告がかような文言を付したことは右納付の効果に何らの影響を及ぼすものでもないのである。

(6) 原告は、通告処分を受け、その履行を終え、これによる事件の終結を選択したものであるから、本件差押えに係る没収品に該当する物品は、原告の昭和五七年六月八日付け納付の申出により確定的に国庫に帰属し、これに伴って差押えはその効力を失ったものである(なお差押物件中没収品に該当する物品以外のものについては、既にすべて還付済である。)。

したがって、本件差押処分の無効確認・取消しを求める訴えは、法律上の利益を有しないこととなり、不適法として却下されるべきである。

(二) 被告適格の不存在

(1) 郡山税務署収税管理佐藤正明、同税務署収税官吏佐藤恒夫、白河税務署収税官吏遠藤道高、同税務署収税官吏小野昭が昭和五六年一一月二〇日、原告主張の場所において、捜索、差押えをしたが、その後の同年一二月一日(本訴提起前)、本件が重要な犯則事件として、国税犯則取締法一一条四項に基づき、右郡山税務署収税官吏の分及び白河税務署収税官吏の分は仙台国税局収税官吏赤平繁男及び同国税局収税官吏吉田三郎に対し、それぞれ証憑(差押物件)の引継がなされ、同日以降右各税務署収税官吏らの本件差押物件に対する一切の権限は、右国税局収税官らにそれぞれ承継された。

(2) 差押物件の引継ぎとは、差押物件に対する占有機関の変更であり、間接国税に関する犯則事件について国税犯則取締法一一条四項の規定に基づく証憑の引継がなされた後は、証憑物件の占有のみならず、当該犯則事件の処理も専ら国税局(調査は国税局収税官吏、通告処分は国税局長、告発は国税局収税官吏又は国税局長)においておこなわれることになる。

(3) 本件差押物件に対する権限の承継は、行政事件訴訟法一一条一項ただし書にいう権限の承継に該当すると解され、したがって右権限承継後に税務署収税官吏に対して提起された原告の本件差押処分の無効確認の訴えは、被告適格を有しない税務署収税官吏を被告とするもので不適法である。

2  本案に対する抗弁

(一) 本件捜索・差押えの経緯

(1) 原告は、福島県東白川郡矢祭町大字中石井字小野沢一〇番地を販売場として、所轄白河税務署長から酒類販売業免許を受けて酒類の販売業を営んでいる者であるが、後記のとおり、本件各税務署長から酒類販売業の免許を受けていない場所において、継続的に酒類の販売業を営んでいた。

(2) 郡山税務署関係

ア 昭和五六年一〇月一八日、郡山市周辺の地域に、訴外角田酒販株式会社(本店・東京都台東区東上野五丁目二四番一〇号)名義で、宣伝文として、「酒が半値以下(五割引)だなんてあなたは信じますか?(ボトルカード方式で)」、「日本一、酒の安売り王」、「第一弾一〇月末まで営業中」、「角田酒販(株)郡山出張所」などと記載し、同出張所の所在場所を図示した新聞折込チラシが配付されるとともに、同日から、右チラシに郡山出張所の所在場所として表示された同市駅前一丁目一番二〇号の店舗(以下、「郡山販売場所」という。)において、酒類の販売が開始された。

イ 右の新聞折込チラシの配付及び酒類販売の開始を行ったのは、原告であり、原告は、その後同年一〇月下旬、一一月上旬、同月中旬にも、右チラシと同様の宣伝文を記載した新聞折込チラシを郡山市周辺の地域に配付し、本件捜索、差押えがなされた同年一一月二〇日ころまで右郡山販売場所において、不特定多数の顧客に対し、継続して酒類の販売をしていた。

ウ 右酒類の具体的な販売方法は、次のとおりである。

まず、顧客が、郡山販売場所で店員に対し、購入を希望する酒類の銘柄・級別・数量を告げ、「申込証(ボトルカード)」と表示された複写式のカード(以下、「ボトルカード」という。)に所要事項(顧客の住所・氏名・電話番号等)を記入することにより、売買契約を締結し、酒類の代金と引換えに、ボトルカードを受け取る。

なお、右のほか、ボトルカードへの所要事項の記入を、応対した店員がすべて行う場合や、所要事項の記入を一部省略する場合等もある。

次に、顧客に対する酒類の引渡しは、売買契約の締結日以降に、ボトルカードと引換えで、<1>郡山販売場所において引き渡す、<2>郡山販売場所に近接した同市駅前一丁目八番三号の梅林有料駐車場ほかに駐車させていたトラック内から引き渡す、<3>運送業者に以来して顧客の指定する場所に配達するなどの方法で行うというものであった。

(3) 白川税務署関係

ア 昭和五六年一一月三日、白河市及び太田原市周辺の地域に、角田酒販株式会社の名義で、宣伝文として、「白河にも登場!」、「酒が半値以下(五割引)だなんてあなたは信じますか?(ボトルカード方式で)」、「つのだ酒販(株)白河出張所」などと記載し、同出張所の所在場所を図示した新聞折込チラシが配付されるとともに、同日から、右チラシに白河出張所の所在場所として表示された白川市中町七二番地中町中央ショッピングセンター内の店舗(以下、「白河販売場所」という。)において、酒類の販売が開始された。

イ 右の新聞折込チラシの配付及び酒類販売の開始を行ったのは原告であり、原告はその後、本件捜索、差押えがなされた同年一一月二〇日ころまで、右白河販売場所において、不特定多数の顧客に対し、継続して酒類の販売をしていた。

ウ 右酒類の具体的な販売方法は、主として、顧客が、白河販売場所で店員に対し、酒類の銘柄・級別・数量を注文し、ボトルカードは作成しないまま、その場で代金と引換えに酒類を受け取るというものであったが、郡山販売場所での販売方法と同様の販売方法も一部なされた。

(4) 酒税法九条一項によれば、酒類の販売業をしようとする者は、政令で定める手続により、販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長の免許をうけなければならないところ、原告は郡山販売業の免許を受けておらず、原告の酒税法違反の嫌疑は明らかであった。

(5) 本件各税務署長は、それぞれ、原告に対し、郡山販売場所及び白河販売場所における酒類の販売行為は、酒税法九条一項に違反するので直ちに中止するよう再三警告を行ったが、原告は、これを全く無視して、その後も違法な右販売行為を続行した。

そこで本件各税務署の前記各収税官吏らは、原告にかかる酒税法第九条一項違反の嫌疑事実につき、事案の真相を究明するため、国税犯則取締法二条一項の規定に基づき、裁判官の許可を得て、本件捜索・差押えを行ったものである。

(二) 本件捜索・差押えの適法性

以上のとおり、本件捜索・差押えは、原告が、酒類の販売場として免許を受けていない郡山販売場所及び白河販売場所において酒類の販売を継続的に行い、酒税法九条一項違反の嫌疑が存在したため、事案の真相を究明するため、国税犯則取締法二条一項の規定に基づいてなされたもので、本件捜索・差押えの処分には、何ら違法はない。

四  抗弁に対する原告の認否、反論

1  本案前の抗弁について

(一) 通告処分の履行による訴えの利益の消滅について

(1) 通告処分は、刑事罰の威嚇のもとに、その履行を強制されるもので、そもそもその履行は、犯則嫌疑者の自由な意思によるものではない。

(2) 原告は、本件差押処分は違法、無効なものであるとの認識のもとに、仙台国税当局の調査にも応ぜず、通告処分にも、法定期間二〇日を越える二か月間これに応じないでいたが、同種の別件について、原告と仙台国税局以外の国税局との間に話合いが成立して通告処分を履行したところから、仙台国税局は、原告に対して、しきりに本件通告処分についても、同じ条件を付するから履行するよう求めた。

原告は、本件について本訴を提起して現に係争中であることをもって一旦はこれを拒んだが、同国税局間税部監視課横山統括官から条件付履行でよいからと再三の申入れを受け、かたわらこの機会にこれに応じなければ、告発のうえ刑事罰を科することとなるといわれたので、考慮のうえ、同国税局側において通告履行の点を訴訟上主張しないことを条件として通告に応ずることとし、仙台国税局もこの条件を応諾した。

したがって被告らは、このような本案前の申立てをすることを許されない。

(二) 被告適格の不存在について

証憑の引継は、権限の引継を意味しない。

税務署と国税局という下部機関と上部機関の間で証憑の引継がなされたというようなことは、行政事務上の便宜に基づく物件の占有の移転にすぎず、行政訴訟主体の変更を生ずるものではない。

2  本案の抗弁について

(一) 本案に対する抗弁(一)のうち、原告が新聞折込チラシの配布等、ボトルカード方式による酒類販売の広告宣伝、酒類の購入希望者に対する申込証(ボトルカード)の販売、その代金の受領の業務を行ったことは否認する。右業務を行ったのは、訴外角田酒販株式会社である。

その余の事実は認める。

(二) 同(二)のうち、本件捜索・差押えの処分に何らの違法性がないとの点を争う。

五  証拠関係

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  原告が酒類の販売を業とするものであること、郡山税務署収税官吏佐藤正明、同税務署収税官吏佐藤恒夫、白河税務署収税官吏遠藤道高及び同税務署収税官吏小野昭が、それぞれ昭和五六年一一月二〇日、原告主張の各場所において、酒税法違反嫌疑事件につき、捜索、差押えをしたことは、当事者間の争いがなく、成立に争いのない乙第一二号証の一、同第一四号証、同第一八号証の一及び弁論の全趣旨によれば、右各収税官吏は、それぞれ右各場所において、別紙目録(五)ないし(八)の各物件を差し押さえたものと認められる(原告が主張する別紙目録(一)ないし(四)記載の物件は、別紙目録(五)ないし(八)の各数量を集計して表示したもので、ほぼ一致するが、一部符号しないものがある。しかし符号しない物件が差押えられたものと認めうべき証拠はない)。

二  本件訴えのうち、主位的請求である本件差押無効確認の訴え及び予備的請求である本件差押取消請求の訴えの適法性について判断する。

1  前記乙第一二号証の一、同第一四号証、成立に争いのない乙第一二号証の二、同第一三、第一五証によれば、原告は、昭和五六年一〇月一九日から同年一一月二〇日までの間、自己が酒類の販売場として免許を受けた福島県東白川郡矢祭町大字中石井字小野沢一〇番地以外の場所である郡山販売場所において、多数の消費者に対し、合計三三七六万六九八〇ミリリットルの酒類を、同年一一月三日から同年同月二〇日までの間白河販売場所において、多数の消費者に対し、合計五三一万九〇〇〇ミリリットルの酒類をそれぞれ販売し、また販売の目的で同年一一月二〇日郡山販売場所、同県郡山市富久山町久保田字梅田五番地全国赤帽福島県軽自動車運送協同組合赤帽郡山配送センターの両所において、合計三八二万三八四四ミリリットルの酒類を白河販売場所において、合計九四万五〇〇〇ミリリットルの酒類をそれぞれ所持したものとして、酒税法九条一項違反により、仙台国税局長から昭和五七年四月五日付をもって、罰金に相当する金二〇万円及び書類送達費金六六〇円並びに没収品に該当する酒類(本件差押物件中の酒類全部)の納付方を通告され、右通告書は同年同月八日原告に送達されたこと、原告は同年五月八日右金二〇万円を、同年六月八日右金六六〇円及び右没収品に該当する酒類の納付をしたこと、以上の各事実を認めることができる。

右認定を左右すべき証拠はない。

2  ところで間接国税に関する犯則事件にあっては、収税官吏が犯則事件の調査を終えたときは、犯則嫌疑者の居所が分からないとき等の事情がある場合以外は、直ちに告発することなく、その結果を所轄国税局長又は所轄税務署長に報告し(国税犯則取締法一三条一項)、右報告を受けた国税局長又は税務署長は調査の結果犯則がなされたことの心証を得たときは、通告の理由、罰金又は科料に相当する金額、没収品に該当する物品、徴収金に相当する金額、書類送達並びに差押物件の運搬、保管に要した費用、納付場所等を内容とする通告処分を行うのを原則とし(同法一四条一項)、通告処分を受けた犯則者は、通告処分の内容を履行するかどうかを、その自由意思によって決することができ、通告処分の内容を任意に履行したときは、公訴は提起されず(同法一六条一項)、通告不履行の場合、国税局長又は税務署長は告発の手続をなさなければならない(同法一七条一項)。そして右履行により事案の終結がなされ、納付の申出をなすべき旨を通告された没収品に該当する物品について、犯則者が納付の申出をしたときは、当該物品を納付したのと同一の効果が生じ、この納付の申出により、当該物品の所有権は、国庫に帰属することとなる。したがってこれにより、当該物品に対する差押えは効力を失うこととなるといわなければならない。

右1に認定の事実によれば、本件差押物件中没収品に該当する酒類については、原告はこれを通告に従って結局納付したのであるから、これによって右酒類に対する原告の所有権は国庫に移転し、右酒類に対する本件差押えの効力は、失われたものといわなければならない。

原告は、通告処分は刑事罰の威嚇のもとに、その履行を強制されるもので、その履行は、犯則嫌疑者の自由な意思によるものではない旨主張する。

国税犯則取締法十七条一項には、右のとおりの規定がなされており、また右乙第十二号証の一及び成立に争いのない乙第十四号証によると、原告に対する本件通告書の末尾には、「なお、この通告書の送達を受けた日から二〇日以内に通告の旨を履行しないときは検察官に告発します。」との記載がなされていること、右通告書に基づく原告の納付書には、「但し、本件については福島地方裁判所に於て現に係争中であるので通告に従って全部納付を行ない難い旨再三開陳してきたところであるが、貴局より納付に応じない時は告発の上刑事罰を科するというきびしい通告なので、右訴訟に於ては任意に納付に応じた事実を援用しない事を条件にやむを得ず納付に応ずる次第である。」との付記をしたことが認められる。

しかし右一七条一項の規定は、あくまでも犯則者が通告処分の内容を履行するかどうかの選択をなしうることを前提としたものであり、本件通告書の末尾における右記載も、右一七条一項の規定の趣旨を注意的に記載したものと解されるのであって、右条項が存在し且つ本件通告書に右のような注意書があるからといって、これにより犯則嫌疑者の通告書が自由な意思によるものでないということはできない。そのほか原告がその自由意思によらないで右納付の申出をしたことを認めうべき証拠はなく、かえって原告が納付書になした右付記の内容に徹すると、原告は刑事訴追を受けることの不利益等諸般の事情を考量して、右履行をなしたものと認められるのであって、原告の右納付の申出が自由な意思によるものでないとの原告の主張は採用し難い。

また原告は、仙台国税局側において通告履行の点を訴訟上主張しないことを条件として通告に応ずることとし、仙台国税局もこの条件を応諾したものであるから、原告の通告履行を前提とする被告らの本案前の申立ては、許されない旨主張する。

右認定のとおり、原告は本件通告書に基づく納付の申出に当って、納付書に右のとおりの付記をしたことが認められるが、納付の申出に当って、このような条件を付することは許容されていないから、右の条件は無効というべく、また仙台国税局が原告の右条件を承諾したことを認めうべき証拠もない。

したがって、原告の右主張は理由がない。

本件差押物件中、没収品に該当する前記酒類以外の差押物がすべて還付済であることについては、原告はこれを明らかに争わないから自白したものとみなす。

そうすると、本件差押物件については、すべて差押えの効力が失われているから、この点において、原告は、本件差押えの無効確認及び取消しを求める訴えの利益を有せず、右各訴えはいずれも不適法といわなければならない。

三  そこで次に被告国に対する損害賠償請求について検討する。

1  まず原告は、「ボトルカード方式」による酒類販売は適法である旨主張する。

(一)  本件酒類の販売方法(当事者の主張三の2の(一)の(1)ないし(3)の事実、ただし、原告がその販売方法 を行ったという点を除く。)は、当事者間に争いがない。

(二)  成立に争いのない乙第一九、二〇号証及び弁論の全趣旨によれは、原告は酒類製造業者である東菱酒造株式会社の大株主で、事実上同会社を経営している者であるが、「ボトルカード方式」による酒類販売方法を考案企画し、その広告ビラ・カードの考案等は原告が自ら行い、その販売にあたっては、右会社の経理課次長井上久寿男が代表取締役となっている角田酒販株式会社名を使用したこと、同会社は郡山販売場所及び白河販売場所における酒類販売業の免許を受けておらず、右販売は原告が東菱酒造株式会社から出向させた者において行ない、原告がその指示をしていたこと、原告が右により販売された「ボトルカード」に基づき酒類の配達をしたこと、以上の各事実を認めることができる。右認定を覆すべき証拠はない。

(三)  右(一)、(二)の各事実によると、原告は角田酒販株式会社の名を使用し、多数の消費者に「ボトルカード」を販売する方法等により、酒類の販売場として免許を受けていない場所において、酒類を販売したものであり、原告は酒税法九条一項の規定に違反したものといわなければならない。

2  ところで原告は、本件酒類の販売が酒税法九条一項の規定に違反したものとしても、同条項は職業選択の自由を保障した憲法二二条一項に反する違憲の規定である旨主張するので検討する。

(一)  酒類販売業免許制度成立の経緯

成立に争いのない乙第一、二号証の各一、二、同第三号証の一ないし四によれば、元来酒類販売業は自由に行なわれ、昭和一三年当時酒類販売関係者は全国に約二五万人の多数に達していたこと、そのため売行不振に伴う各業者の販売競争は熾烈に展開され、延いては濫売競争となり、これによって営業主の没落、名義変更が一か年を通じて三割にも達する状況となったこと、このようなことから醸造業者は売掛金の回収に多大の困難をきたし、多い時代には一万二〇〇〇人からいた醸造業者が毎年二〇〇軒位い廃業を余儀なくされ、昭和一三年当時には、七〇三〇人に激減したこと、売掛金の回収難は、醸造業者を没落させ、納税を困難ならしめ、また一部小売業者において、不正な混用、不衛生な混用をする問題も生じたこと、そこでこれらの弊害を矯正し、醸造業者の健全な発展を期するとともに、納税を容易にするため、政府は酒類販売業免許制度を採用する酒造税法等を一部改正する法案を第七三回帝国議会に提出し、同帝国議会において審議の結果、右改正法案が可決、成立し、昭和一三年四月一日以降酒類販売業免許制度が実施されるに至ったこと、以上の各事実を認めることができ、右認定を左右すべき証拠はない。

(二)  国税収入中における酒税収入

酒税の課税標準は、重量に基づき、酒の種類、アルコール度数に応じて定められているところ(酒税法二二条)、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三六ないし第五五号証の各一ないし三によれば、昭和五九年度における酒造会社の売上高に対する酒税(物品税を含む、ただし、弁論の全趣旨によれば、そのほとんどは酒税と認められる。)の負担割合は、麒麟麦酒株式会社五六パーセント(売上高一兆一五一七億六二〇〇万円、酒税物品税六五五七億六七〇〇万円)、サントリー株式会社五一パーセント(売上高七六一五億四八〇〇万円、酒税物品税三九三二億九一〇〇万円)、サッポロビール株式会社五四パーセント(売上高三七九九億二八〇〇万円、酒税物品税二〇七六億六三〇〇万円)、朝日麦酒株式会社四五パーセント(売上高二二四三億六六〇〇万円、酒税物品税一〇二五億四五〇〇万円)、ニッカウヰスキー株式会社四八パーセント(売上高九三一億八一〇〇万円、当期庫出酒税四五三億四五〇〇万円)であるのに対し、その他の商品製造会社の売上高に対する物品税、砂糖消費税或は揮発油税等の負担割合は、自動車製造会社にあっては物品税が四パーセント、電機器具製造会社にあっては物品税が一パーセントないし二パーセント、製糖会社にあっては砂糖消費税が五パーセントないし七パーセント、石油会社にあっては揮発油税・軽油引取税・地方道路税を含め五パーセントないし一三パーセントであることが認められ、酒造会社の売上高に対する酒税の負担率は著しく高率であるということができる。

また前記乙第一号証の一、二によれば、酒税は租税収入のうち所得税・法人税に次ぐ第三位を占め、その金額も昭和五八年度予算において一兆八六〇〇億円が見込まれるものであったことが認められる。

(三)  酒類販売業免許の運用状況

成立に争いのない乙第五号証の一ないし三によれば、全国における酒類販売場数は昭和五一年度一六万八三七一場、昭和五二年度一六万九九二五場、昭和五三年度一七万〇八一三場、昭和五四年度一七万一二八七場、昭和五五年度一七万二一二二場と逐年増加しており、成立に争いのない乙第四号証によれば、国税庁は酒類の販売業免許等の取扱いについては基準を定め、申請人の経営知識・能力・資力・設備、当該地域における世帯数を基とする需要量及び地域の特殊性等に応じて免許を行っていることが認められる。

(四)(1)  酒税法は、酒類を製造しようとする者について免許制度を採用(酒税法七条)するほか、酒類の販売業を開業しようとする者についても、前記のとおり免許制度を採用している(法九条一項)。

同法九条一項が酒類の販売業を営もうとする者は、政令で定める手続により、販売場ごとにその販売場の所在地(販売場をもうけない場合には住所地)の所轄税務署長の免許を受けなければならないとして、その免許の権限を徴税権限者である税務署長に付与していること、同法一〇条六号が「免許の申請者が免許の申請前二年内において国税又は地方税の滞納処分を受けた者である場合」、同条一〇号が「酒類の製造免許又は酒類の販売業免許の申請者が破産者で復権を得ていない場合その他その経営の基礎が薄弱であると認められる場合」、同条一一号が「酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を与えることが適当でないと認められる場合」には免許を与えないことができるとし、同法一一条一項が「税務署長は、酒類の製造免許又は酒類の販売業免許を与える場合において、酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持するために必要があると認められるときは、製造する酒類の数量若しくは範囲又は販売する酒類の範囲若しくはその販売方法につき条件を附することができる」としていること、同法一四条三号が酒類販売業者が「二年以上引き続き酒類の販売業をしない場合」税務署長は酒類の販売業免許を取り消すことができるとしていること、前記のとおり酒類販売免許制度が昭和一三年四月一日から施行されるに至ったが、その目的は酒税の保全にあったことに鑑みると、現行の酒類販売業免許制度の目的は、旧法を承継し、酒類販売業者の経営の安定を通じて、酒税収入の確保を目的とするものであることは明らかである。

(2)  ところで憲法二二条一項は、何人も公共の福祉に反しない限り、職業選択の自由を有する旨規定している。

職業選択の自由には、職業活動の自由も包含されるものであるが、職業の自由は、事柄の性質上社会に及ぼす影響が大きいから、憲法が保障する他の自由に比べて、公権力による規制の要請が強く、憲法も特に公共の福祉に反しない限り、その自由を認めるものである。しかし職業は、その種類・性質・内容・社会的意義及びその影響において、極めて多種多様であるため、それに対する規制を要する社会的理由・目的も千差万別であり、重要性も区々にわたるから、職業の自由に対する規制措置が憲法二二条一項にいう公共の福祉のために要求されるものとして是認されるか否かは、一律に論ずることができず、具体的な規制措置について、規制の目的・必要性・内容・これによって制限される職業の自由の性質・内容及び制限の程度を検討し、これを比較考量したうえで慎重に決定すべきものである(最高裁判所昭和五〇年四月三〇日判決、最高裁判所民事判例集二九巻四号五七二頁)。そしてその法的規制においては、規制の対象・手段・態様等において自ら一定の限界が存在すると解されるが、その法的規制措置を講ずる必要があるか否か、その必要があるとしてもどのような対象について、どのような手段・態様の規制措置が適切妥当であるかは、主として立法政策の問題として、立法府の裁量判断にまつほかなく(一般に職業の自由に対する制約には、社会公共に対する危険防止のための消極的規制と、社会・経済政策のための積極的規制とに大別され、積極的規制の場合には、その性質上消極的規制に比較し、さらに広汎な立法府の裁量権が認められる)、裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限って、これを違憲とし、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。

(3)  ところで租税収入は、国の存立・維持、社会的・経済的諸政策遂行のための不可欠、重要の財源であるから、租税収入を確保することを目的とする酒類販売免許制度の目的は、重要な公共の利益に合致しているということができ、その制限は右の積極的規制の場合に該当するというを妨げないものである。原告は経済的自由に対する政策的・積極的規制が公共の福祉として許されるためには、その目的が経済的弱者保護ないし社会権の実現のためでなければならない旨主張するが、公共の福祉の内容をそのように限定的に理解しなければならない合理的根拠は見出し難い。そして酒税は前記のとおり国税の中においても所得税、法人税に次ぐ第三位の租税収入となるものであり、しかも酒税の課税率は、物品税等他の間接税に比べ著しく高率である。他方酒税は最終的には消費者が負担すべきものであるが、その徴税の便宜から、出庫税の制度を採用し、酒造業者が出庫する段階で課税し、酒類販売業者を介してこれを消費者に転嫁させることを期している。酒税を支払う酒造業者の酒税負担率は前記認定のとおり、他種企業にはみられない高率、高額なものとなっており、もし酒造業者の右負担が酒類販売業者を通じて消費者に支障なく転嫁されず、その回収がはかられないときは、酒造業者に大きな負担をもたらし、その経営基盤をあやうくし、結局安定した酒税の保全にも悪影響を及ぼすおそれがある。酒類販売業者の完全なる自由を認め、その活動の自由にゆだねるとき、経営基盤の薄弱な者がこれに加わり、或は需給の権衡を失して業者が乱立した場合、業界における著しい過当競争が生じ、多数の経営不振・倒産等により、酒造業者の売掛金回収が著しく困難となり、酒造業者自身の倒産をも生じさせることは、前記認定のとおり、すでに我国において経験したところである。したがって、酒類販売業者に対し、一定の規制措置を設けて、その自由を制限することは、その目的において、一応の合理性が認められるものである。

そして、その規制の手段・態様においても、申請者が同法一〇条に掲げる消極的要件に該当しない限り免許を与えることを原則とし、その消極要件の内容も、酒税逋脱の防止、酒税滞納の防止、附随的に犯罪の防止等を目的とするものであることがあきらかであるから、不合理なものとはいえず、結局右制度が著しく不合理で立法府が裁量権を逸脱したことが明白な規定であることまで解することはできない。

原告は、酒税納付義務者は、酒類販売業者ではないから、仮に酒税収入の確保のための営業免許制度を設けるとするならば、右の酒類製造者又は酒類引取者を免許制とすることで十分であり、これに反し納税義務者でない酒類販売業者を右目的のために免許制とすることは、それ自体著しく不合理である旨主張する。

しかし酒類販売業者は、酒類製造業者と消費者との間にあって、酒税転嫁の重要な機能を有しており、酒税の保全上酒類製造業者と密接に関連しているから、この観点から、その職業の自由に対する制限を加えることもただちに不合理であるということはできない。

原告は、酒税法は酒税徴収を確保するため、酒類製造業者に対し各種事項の帳簿記載義務等を課し、納税の担保として酒税の保全のため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより酒類製造業者に対し、金額及び期間を指定し、酒税につき担保の提供を命ずることができるなどとして、納税義務者たる酒類製造業者から酒税徴収を確保するために、二重、三重にわたる万全の方策を講じているから、右のほかに酒税収入の確保という名目のもとに酒税納付義務者でもない酒類販売業者に対してまでも免許制の規制を加えることは、いわば屋上屋を重ねるところの全く無用の措置である旨主張する。

しかしこの点についても、前記認定のとおりの酒類製造業者の酒税負担率が著しく高率であることの具体的得失に鑑み、長期に亘る安定した酒税保全のためには、単に酒類製造業者を規制するのみでなく、酒税の最終負担者である消費者との中間にあって酒税転嫁の重要な機能を営んでいる酒類販売業者をも視野に入れて酒税徴収の全体の制度のうえから、なお酒類販売業者をも規制の対象とすることも十分首肯しうるところであって、酒類販売業者の規制を全く無用のものというのも当を得ない。

さらに原告は、酒類販売業の自由競争を認めれば、その活発な販売競争によって販売量が増大し、結果的には酒税徴収額も増大する旨主張する。

しかし酒類販売業の自由競争が著しい弊害を生じたことは、前記認定のとおりであって、原告の右主張は、にわかに採用できない。

なお、成立に争いのない甲第五、六号証、同第九号証、同第一一号証、証人島野房巳の証言及び原告本人尋問の結果によれば、いわゆる第一次、第二次臨時行政調査会において、行政簡素化、許認可行政の改革の観点から、また行政監理委員会、物価安定政策会議、公正取引委員会において、物価政策の観点から、それぞれ酒類販売業免許制度について根本的に再検討を加えるべき旨の議論ないし意見がなされたことが認められ、他方成立に争いのない甲第一六、一七号証、同第二三ないし第二五号証、原告本人尋問の結果によれば、許認可制度には利権が結び付く可能性があり、既存業者の利益偏重に傾く弊も窺われないではないが、これら諸般の問題をも配慮のうえ、酒税保全のための観点から、酒類販売業者についていかなる規制手段をとりうるかについては、なお議論の余地があっても、それは立法府の裁量の範囲内の問題であると解せられる。

3  右のとおり、酒税法九条一項が酒税保全の目的をもって酒類販売業者について免許制度を採用したことには、その必要性と合理性を一応認めることができるものであり、同条項が憲法二二条一項の規定に違反するものということはできないから、酒税法九条一項が憲法二二条一項の規定に違反することを理由として本件差押処分が違法であるとの原告の主張は理由がなく、国税犯則取締法二条一項の規定に基づいてなされた本件差押え処分は適法であるから、本件差押処分が違法であることを前提とする原告の本件損害賠償請求は、その余の点について検討をすすめるまでもなく、理由がないといわなければならない。

三  以上によれば、本件訴えのうち本件差押無効確認の訴え及び予備的請求である本件差押取消請求の訴えはいずれも不適法であるからいずれもこれを却下し、本件請求のうち、損害賠償請求は理由がないから、これを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 山口忍 裁判官 永井崇志)

目録 (一) 収税官吏 佐藤正明分

差押の場所 郡山市富久山町久保田字梅田五

赤帽福島県軽自動車運送協同組合福島県支部郡山配送センター

差押物件

<省略>

目録 (二) 収税官吏 佐藤恒夫分

差押の場所 郡山市駅前一丁目一番二〇号

角田酒販株式会社郡山出張所

差押物件

<省略>

目録 (三) 収税官吏 遠藤道高分

差押の場所 福島県東白川郡棚倉町大字強梨字岡ノ内二〇

吉田寿太郎居宅

差押物件

<省略>

目録 (四) 収税官吏 小野昭分

差押の場所 白河市中町七二番地 中央ショッピングセンター内

角田酒販株式会社白河出張所

差押物件

<省略>

目録 (五)

郡山税務署収税官吏佐藤正明が差押えした物件

差押の場所 郡山市富久山町久保田字梅田五

赤帽福島県軽自動車運送協同組合福島県支部郡山配送センター

差押の日 昭和五六年一一月二〇日

差押物件

<省略>

目録 (六)

郡山税務署収税官吏佐藤恒夫が差押えした物件

差押の場所 郡山市駅前一丁目一番二〇号

角田酒販株式会社郡山出張所

差押の日 昭和五六年一一月二〇日

差押物件

<省略>

目録 (七)

白河税務署収税官吏遠藤道高が差押えした物件

差押の場所 福島県東白川郡棚倉町大字強梨字岡ノ内二〇番地

吉田寿太郎方

差押の日 昭和五六年一一月二〇日

差押物件

<省略>

目録 (八)

白河税務署収税官吏小野昭が差押えした物件

差押の場所 白河市中町七二番地 中央ショッピングセンター内

角田酒販株式会社白河出張所

差押の日 昭和五六年一一月二〇日

差押物件

<省略>

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